2022年3月下旬。
初めてD病院の乳腺外科と形成外科を受診した翌週です。
乳腺外科と形成外科、それぞれ2回目の通院日がやってきました。
東京は時ならぬ雪模様で、傘をさして氏神様にお参りし、その足でてくてく病院に向かったのを覚えています。
この日もあまり待つことなく、乳腺外科の診察室へ。
先週の検査結果が出たので、それをもとに今後の方針を決めていくことになります。
「問題がなければ、乳頭部はそのまま残して全摘したい」と意向を伝えたところ、担当医のE先生からは「乳頭部近くのがんではないので、おそらく大丈夫でしょう」との回答。
E先生は思案の末、答えてくれたと思います。
一切の憂いなく「大丈夫です」と太鼓判を押してくれたわけではないでしょう。
そりゃそうだよなぁ。白か黒かの問題じゃないから、「100%問題なし」とはどの先生だって言えない。
もっと言うなら、時が経てば術式やそれにまつわる考え方だって、今とは変わってくる可能性もある。
ズバッと言ってもらいたい気持ちがある一方、そんなことは不可能なんだなぁとわかります。
全摘出にも、「完全な全摘」と「乳頭乳輪温存乳房切除」がある
乳がんの手術方法を調べると、「全摘出」「部分摘出」大別されます。
そして、「全摘出」の中に、下記の二つがあります。
(1)乳頭部も含めた乳房全体を摘出する(乳房切除術)
(2)乳頭部と皮膚を残して全摘する(乳輪乳頭温存乳房切除術)
こちらの国立がん研究センターのサイトに、乳がん手術の概要が分かりやすくまとまっています。
国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がんの手術について」
(2)の「乳輪乳頭温存乳房切除術」は、再建を前提にした術式です。
では乳房再建を意識しなければ、乳頭部を含めた乳房の全摘がベターなのか?
万難を排すとしたら、それこそハルステッド法の頃のようにでき得る限り取り除いた方がいい、という考え方もあると思います。
実際のところ、乳頭部を残した全摘の場合、再発率は高いのでしょうか。
色々な情報を集めて調べてみると、近年では「乳がんの細胞は発症後ごく早期から全身に廻っている(乳がん全身病説)」という論調が主流のようですね。
だからこそ、全身治療(抗がん剤・ホルモン療法・抗HER2療法)が有効なのですね。
つまりは、局所(乳房)だけをきれいにしたとしても、既にがん細胞は身体に散らばっているかもしれない。
ならば、慎重に検査して医師が「問題ない」と判断したなら、「乳頭部を残すことによる再発」の心配は、し過ぎなくて良いのではないかも、と自分は考えました。
(もう「乳頭部を残すか」以前のお話?他の原因で転移するのは別問題)
下記の記事が詳しく、とても役立ちました。
がんプラスさんの記事はどれも分かりやすく、とても助かっています。
❝ 乳頭を残すことについては、少し前までは専門家の間でも意見が分かれていました。乳頭は乳腺の先にある組織なので、乳頭を残すと再発しやすいという考えがあったからです ❞
❝ しかし、アメリカでこの方法が始まってからいくつかの報告が出ていますが、乳輪乳頭を残した場合の乳輪乳頭への再発率は、それほど高くないことがわかってきました。それ以来、乳輪乳頭を残してもいいだろうという考えをもつ専門家が増えてきています。もちろん、乳輪乳頭を残すにあたって、事前に造影MRIや超音波検査などで乳頭にがんが及んでいないかどうかを注意深く確認する必要があるということは、いうまでもありません ❞
(がんプラス「乳がんの「乳房切除術」治療の進め方は?治療後の経過は?」 ❝❞ 引用)
また、ハルステッド法の頃と違って、取り除く範囲の大小に生存率は左右されないとも現在では言われているようです。
(もちろん手術が必要と明白な部分はしっかり切除する前提)
こういった事情を知り「乳頭部を残した全摘をして、術後に再発防止のためサブタイプや体質に見合った全身治療をしよう」と決めました。
乳頭部の再建は十人十色
私の場合は「乳頭部を残す全摘」を選びました。
ただ一方で、乳頭部を再建された方の写真を拝見すると本当に綺麗な仕上がりなんですよ。現代技術の素晴らしさをしみじみ感じますね。
また命に関わらない部分を切り捨てず、乳房・乳頭部再建という方法で患者の気持ちを救い上げてくれる道筋を作ってくださった多くの皆さんに対し、改めて感謝の気持ちが湧いてきます。
乳頭部の再建については、こちらの「E-BeC」さんのサイトがとても分かりやすい上、画像もあるためリンクを掲載させていただきます。
全摘・部分摘出。
全てを取り除く全摘・乳頭部を残す全摘。
乳房再建のある・なし。
インプラントを使うか・自家組織を使うか。
自家組織の場合も、お腹のお肉を使うか・背中のお肉を使うか。
それぞれの状況、身体の状態や気持ちに応じて、自分が納得できる道筋を決められるといいですよね。