吸引式乳房組織生検(マンモトーム)の結果を待つ2022年2月中旬は、別件で少々大変でした。
「乳がんだったらどうしよう!」というドキドキ感があったとか、そういうことでなくですね。
新型コロナワクチンの3回目を打った晩に、副反応と思われる強い心臓の痛みが出たのです。
控えめに言って悶絶しましたが、余談になりますので別の機会に書きますね。
さて、この心臓の件で受診した大学病院の待合室にて着信がありました。
お世話になっている乳腺クリニックからです。
「生検の診断結果が早めに来たので、時間があるようなら次回予約日より前に来ませんか?」という内容でした。
10日程度かかるはずだったところを、1週間以内で結果が来た形です。
この日は「一日がかりかも」と思いながら、内科かかりつけ医→大学病院(循環器系)の流れでした。
「もう一件受診が増えたところで問題ないな」と、遅めの時間で乳腺クリニックの予約を取ってもらいました。
「全部の用事が一日で済むなんてラッキー」くらいの気持ちでした。
そして大学病院からいったん帰宅し、乳腺クリニックに向かったのです。
この日もほとんど待つことなくスムーズに診察室に呼ばれました。
それでですね。
「検査の結果、乳がんだった」と知らされたんですね。
「・・・え?」
もうそれだけです。
乳がんの可能性を考えておらず、「まぁ大丈夫だろう」という根拠のない自信で今日も来てますから。
「Holy shit!」「Oh my God!」的なわかりやすいショックじゃなくて、ホント呆然として静まり返った「・・・」という気持ちです。
そんな状態であっても、普通に「はい」と返事をしていました。
告知の瞬間はっきりと思考停止したのが分かりましたが、こんな時でも何とか正常なコミュニケーションを取ろうとするんですね。
あと、もしかすると「動揺しているところを見られたくない」とかいうダセェ見栄が働くんでしょうか。
いつも通りに振るまうため、脳が強く「通常モードに戻れ」と指令を出していた気がします。
でもきっと院長先生から見たら、うろたえている様子なんてバレバレなんだろうなぁ。
説明は、ざっくりまとめると以下の内容になります。
・「浸潤性乳管癌」という乳がんである。(乳管の外の間質組織にまで広がるタイプ)
・超音波で診たところでは1.3㎝ほどの大きさ。(ステージ1)
・さらなる検査が必要で、MRIとCTを受ける必要がある。
・検査機関で受けることになるため、今予約を取ってくれる。
・MRIとCTは別日に撮る必要があるから2日かかる。
これからの段取りについては下記の通り。
①MRI・CT検査の結果
②Er・PgR・HER2の結果
を待って
③必要なら、手術のために病院を紹介してくれる
この時は「あとで夫に説明しなくちゃ」という気持ちで、内容を忘れまいと必死でした。
普段ならスマホを出してメモを取りますが、やはり頭の一部がフリーズしていたんでしょうね。
「ご説明の大筋を(病理の説明用紙に)書き足していただいていいですか?」と、お願いすることが精一杯でした。
院長先生は穏やかに「大丈夫ですよ」と、綺麗な字で必要な情報をメモ書きしてくれました。
丁寧な説明を頷きながら聞いていますが、私は「MRIとCTで何がわかるのか」も漠然としか知らない。「どっちが輪切りを見せてくれる方だっけ?」程度の知識量です。
「Er・PgR・HER2」にいたっては初見の文字列ですが、教えられた内容としては、「がんのタイプを把握するために必要」らしい。
そしてこの「Er・PgR・HER2」は、先日生検した組織をさらに詳しく調べて結果を出すので、あらためて来院し検査を受けなくてよい。
どうやら、この数値次第で、治療方法が変わってくる。
「なるほど」とは思いますが、「分かっている気になっているだけだな」という自覚がありました。
それから「どこか懇意にしている病院や、希望する病院はありますか?」と訊かれましたが、特に思い浮かびません。
実家ががん家系ではなく、また「がんで入院する」という身近な人があまりいなかったためです。
「こういったところをご紹介することもできますよ」と、院長先生は病理の説明用紙に、代表的な病院名をいくつか書いてくれました。
自転車で行ける距離の大病院が5つ、その他に「がん研有明」「国立がんセンター」「聖路加」といったがん治療の代名詞のような病院も。
選択肢が多すぎて、どこにしたらよいか考えがまとまりません。
ただ、自宅近辺は大学病院や都立病院など、がんの症例数が多い大病院が複数あるため、「電車に乗って有明や築地方面の病院には行かないだろうな」と思ったのは覚えています。
そうして病理の説明や、今後の段取りを聞き終わった後、受付ですぐにMRIとCTの予約を取ってくれました。
受付にいる看護師さんは生検の時も側にいてくれた(力強いホールド力の)方で、感じよく、ほどよく明るく、こちらの気持ちを汲み取りながら話を進めてくれました。
そして空きがあるということで翌日にMRI検査を、3日後にCT検査を入れてくれたのです。
検査施設の場所も、自転車で行けるような近場です。
「検査機関に駐輪場があるか?」なんていう小さな質問も、電話で検査機関に訊いてくれて助かりました。
帰り際、看護師さんはブースから出てクリニックの玄関まで見送ってくれました。
いつもなら「ありがとうございます」と言うところを、つい「すみません」という言葉が口をついてしまう私に、「はい」と飴を握らせてくれました。
私は飴をほとんど舐めません。
でも、この時もらったサクマドロップ(個別包装)は心から嬉しかった。
手にしただけで、元気がうわーっと湧いてくるのを感じました。
大阪のおばちゃんが常に「あめちゃん」を持っていて人に渡すってこういうことかな。
あったかい習慣だな。
私も持ち歩いて、泣いてる子がいたら渡したいな。
そんな風に思いながら、もうすっかり暗くなった道を必死で帰ったのでした。