2022年3月上旬、諸々の検査結果が出揃いました。
そして、お世話になったA乳腺クリニックから、手術するD病院を紹介していただくことが決まりました。
※わかりやすいよう、今後はできるだけ病院名などにアルファベットをふっていくようにしますね。
(注:実名の頭文字ではありません)
心情的に一区切りがついた頃です。
今回は、その当時「セカンドオピニオンを受けるかどうか」、にわかに心揺れてしまったお話です。
この頃は、「あとはD病院での初診を待つばかり」といった感じでした。
「思考停止」とは違い、心は妙に静かで、少し前まで五里霧中でジタバタしていたことを考えると、吹っ切れた毎日を送っていたと思います。
A乳腺クリニックの院長先生から、D病院につなぐ段取りをスムーズに組んでもらえたからです。
また、佐藤典宏先生の本を読んで考えがまとまり、日常生活の方向性もつかめたおかげで、比較的淡々と暮らしていました。
「うまくいってるな」という時の空気って、何となく肌でわかりますよね。
この時も上手に波に乗れたような感覚があって、「D病院で手術をしてもらう」というルート以外、特に考えていませんでした。
そんな時、二つのアドバイスをいただいたのです。
どちらも年上の女性からの、100%善意から出た助言です。
一つ目は、ご自身も乳がんを経験され全摘と乳房再建をされた方からのご連絡でした。
「自分の経験が役立つなら」という考えの優しい方です。
「色々な病院や医師について調べ、最終的に満足できる手術ができた」という実績があって、「信頼できる主治医と巡り会うまでが大変だった」というご苦労もされています。
一方で私はツルーっとD病院に決まった感があります。
もしかすると「そんなに簡単に決めてしまっていいの?」と、心配してくれたのかもしれません。
「自分がやってよかったことや、注意事項を伝えたい」という気持ちあふれるメールをいただきました。
会ったこともない私のことを気にかけていただいて、本当に感謝しています。
ただ、その時の私はネットで見る様々な体験談をはじめとした「膨大な情報の波にのまれないように」と足を踏ん張っているところでした。
そして、こちらにも書きましたが、乳がんはそのステージ、サブタイプによって必要な治療が変わってきます。
さらに、私は自家組織、その方はインプラントなので、乳房再建の方法一つとっても違う。
つまりは「その方と同じことをするのが適当かわからない」ということです。
実際その頃「術後は再建した乳房の皮膚や筋肉を柔らかく保つためにマッサージを」「先生からも言われると思います」とメールで助言をいただきましたが、私の場合は最後まで担当医からそういった指示はありませんでした。
ほかにも腋窩リンパ節の郭清の有無によって、術後に気をつけるポイントは違ってくると聞きます。
やはり今、お話を聞いてもうまく対応できないかもしれない。
そう思って、「必要な時になったら、またアドバイスをもらえると嬉しいです」と返信しました。
しかし、やんわり過ぎてうまく伝わらなかったのか、今度は「一番不安なのは今だと思う」「メールだと長くなるので、よかったら会って話しませんか」という返信をいただいたのです。
「気の合う友達にだって会うのを躊躇っている今?」
「もう病院も決めて納得しているのに?」
本当に良い方だということはよくわかります。
ただ私は精神的にいっぱいいっぱいで受け入れられる状態になく、その善意の申し出にどう対応していいのかわからず悶々としてしまいました。
二つ目は、下記エントリーで触れましたが、昔ご友人が乳がんの手術を受けた、という方からの言葉です。
そのご友人が手術の出来栄えに満足しておらず、「もっと他の病院にも相談すればよかった」と、長い間後悔していたというお話でした。
そういう経緯で「セカンドオピニオンを受けてみては?」と、私のことも心配してくれたのです。
これはとても近しく、私のことを大切に思ってくれる人からの助言でした。
しかしこのご友人の体験は、20年前の話なんですね。
告知時、A乳腺クリニックの院長先生から教えていただいたお話ですが、乳がんの手術も随分変化している上、ムーブメントがあるということです。
かつては、それこそ乳房・リンパ節とともに胸の筋肉まで取り除いていたものが(ハルステッド法)、「いや、そこまで取らなくてもいいのでは?」と部分切除・温存が主流になっていった。
そして、2013年(全摘の場合、乳房再建に保険が利くようになる)頃から全摘が増えていったというお話でした。
調べてみると、乳腺外科と形成外科が連携して、術後の傷にまで心砕いてくれるようになったのは、ほんのここ最近のことなのですね。
(私はどちらの科の先生にも大変お世話になったので、あらためて感謝の気持ちでいっぱいになりました)
20年前と今とでは、医療の背景や術式に大きな違いがあります。
正直なところ「ちょっと心配し過ぎてくれちゃったんじゃないかなぁ、、、」と思っています。
アドバイスをくれたお二方の心遣いはありがたかった。
それは間違いありません。
ただ、迷いなく「この道だ」と思って進んでいる時だっただけに、正直なところ戸惑いました。
そして心は決まっていても、「これだけぐいぐい・きっぱり言われると揺れてしまう」というのもあるんです。
どちらの方も、しっかりと自分の意見があって、自分の経験や知識を誰かに役立ててほしいと思うフレンドリーでパワフルなタイプだったので、余計に刺さりました。
私の心は「D病院で手術する」と決まっていました。
A乳腺クリニックの院長先生を信頼していたし、「よし、D病院の初診からスタートだ」という気持ちで、これ以上選択肢を増やすつもりはなかったのです。
だって世の中にはいくらでも病院があって、幾通りもの術式がある。
悩もうと思ったらいくらでも悩めるし、正直そんなことをしていたら、がん以前に心身がおかしくなりそうな気がしたのです。
でも、二つのアドバイスをもらった頃、これまでスムーズに進んでいた空気が止まって、自分の心の舵取りがうまくいかなくなっているのを感じました。
そして、どうしたらいいのかわからなくなってしまったのです。
で、ですね。
そんな時は夫に相談です。
なにぶん即決即断の鑑みたいな人で、普段はその言動に「なるほど」と納得することもあれば、「ちょっと待て」と戸惑うこともあります。
でもその時は、悩みをズバッと切って捨ててほしかったんですね。
「君が納得できるのが大事だから、C病院(がんに特化した病院)のセカンドオピニオンを受けてみては?」
夫はそう言ってくれました。
うーん。
そうかぁ。。。
ここまで悩むなら、それもありなのかな。
そうして、「検討してみようかな?」とちょっと検索してみたのです。
「C病院、C病院、、、セカンドオピニオン、、、」
で、調べてみるとですね。
30分の相談で33,000円。。。
ですよね~。
保険利かないってことですものね~~。
。。。。。
うん。
「お二人のお心遣いだけを頂戴しよう」
「そして私は私の道を行こう」
割とすぐさま決めましたよね。
特に不満なく、何も不安に思っていないのに、誰かの言葉で心揺れただけの理由で受けるには、セカンドオピニオンの33,000円は高過ぎた。
「またも心のソロバンが大活躍したな」というお話でした。
(うーん、このシリアスに終われない感)
それでですね。
今振り返っても、(私のケースは)あの時セカンドオピニオンを受けたからといって、何かが大きく変わることはなかったかなと思っています。
二つ目の選択肢を示し「こうではないか」という方向性を教えてもらえるかもしれない。
でも、当然ですが「こうしましょう!」とは誰も言ってくれないのです。
そして私は多くの選択肢を得て、もっと悩んで疲弊したでしょう。
例えば内視鏡でポリープが見つかったら「取りますか?」なんて先生から聞かれません。
鎮静剤で眠っているうちに、チョキン。それはもう「取る」一択です。(サイズによっては翌年以降に取ることもあります)
でも、乳がん(+乳房再建)はそういう病気とは違う。
とても悩ましいところで、そこが心揺れる原因だと思います。
「どうしたらいいか決められない」「複数の専門家の確かな助言から方向性を見極めたい」と自分自身が思う状況なら、セカンドオピニオンは有益でしょう。
そして33,000円は妥当な金額だと思います。
すべては、おかれた状況によりけりです。
でもどんな治療を選ぶかも、セカンドオピニオンを受けるか否かも、最終的には自分が決めるほかない。
そういうことなんですね。
このブログは「私の場合はこうだったな」という、乳がんの覚書です。
その時の気持ちや考えを載せています。
ただ「読んでくれる方が自分に必要な情報を取捨選択してくれるといいな」
そう心から願いながら書いています。